MOSは意味がないのか|求人票50件と出題範囲を突き合わせました
「MOS」と検索すると、検索候補に「意味ない」「恥ずかしい」と出てきます。取ろうと思って調べはじめた人が、そこで手を止めてしまうことがあります。
「意味がない」と言われる理由は、調べるといくつかに集約されます。ただ、そのどれもがある前提の人を基準にした話でした。この記事では感想ではなく、MOS公式サイトの記載と、ハローワークの求人票50件に実際に書かれていた記述を突き合わせて確かめます。
先に結論
- 「意味がない」と言われる理由は、主に3つでした。誰でも取れる/暗記で受かる/事務職では使えて当たり前。いずれもすでに実務でExcelを使っている人を基準にした話です
- 公式は合格率を公開していません。「誰でも取れる」の根拠になる公式の数字は、存在しません
- 求人票50件が求めていた水準は、「基本操作」「簡単な」「初歩的な」が16件で最多。関数は5件、VLOOKUPは2件、マクロは1件でした
- MOS一般レベルの出題範囲は、この水準とほぼ重なります。範囲から外れていたのは50件中1件だけです
- 事務職なら一般レベルで足ります。上級(エキスパート)は、公式が「一般レベルのスキルの証明にはならない」と明記しています
- ただし、MOSを取れば採用されるという話ではありません。それを示す統計は見つかりませんでした
「意味がない」と言われる3つの理由
検索して出てくる記事や掲示板を読むと、挙げられている理由はおおむね次の3つでした。
| 言われていること | 誰を基準にした話か |
|---|---|
| 難易度が低く、誰でも取れる。だから履歴書に書いてもアピールにならない | 同じ資格を持つ人が周囲に多い環境にいる人 |
| 模擬試験の暗記で受かるので、実務で応用が利かない | すでに実務でExcelを使っている人 |
| 事務職ではOfficeを使えて当たり前なので、持っていても評価されない | すでに事務職として働いている人 |
3つとも、指摘そのものは正しいと思います。実務で日常的にExcelを使っている人が、MOSを取っても新しくできることは増えません。転職の場面でも、実務経験があれば資格より職務経歴で判断されます。
問題は、この3つがこれから事務職に応募しようとしている方にも、同じ強さで届いてしまうことです。前提が違うのに、結論だけが共有されています。
実務経験がある人にとって、資格は「すでにできることの証明」でしかありません。実務経験がない人にとっては、できることを示す手段がほかにあまりないという違いがあります。同じ「意味がない」でも、指している中身が違います。
以下、3つを順番に確かめます。
「誰でも取れる」は本当か
合格率の目安として、8割前後という数字を挙げているサイトがあります。ただ、MOS公式サイトのよくあるご質問には、こう書かれています。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 合格率を教えてください。 | 合格率は公開しておりません。 |
| 合格点は何点ですか? | 科目ごとの合格点は公開しておりませんが、1000点満点で550点~850点の範囲が目安となります(科目によってはこの範囲に当てはまらないものもあります)。 |
出典:MOS公式サイト 試験全般に関するよくあるご質問(2026年9月7日確認)
合格率も、科目ごとの合格点も、公開されていません。「誰でも取れる」の根拠になる公式の数字は、存在しないということです。出回っている数字がどこから来たのかは、確かめられませんでした。
累計受験者数は540万人以上(2026年3月31日時点)と公表されています。多くの人が受けている試験であることは確かです。
そのうえで、ひとつ書いておきたいことがあります。難しくないことは、この試験の欠陥ではありません。MOSは「Office製品の操作スキルを証明する」ためにつくられた試験です。基本操作ができることを示すのが目的なら、その水準に合わせて設計されているのが正しい。難しさを競う試験ではありません。
「簡単だから価値がない」という言い方は、証明したい中身と、試験の難しさを取り違えています。普通自動車免許は難関ではありませんが、運転できることの証明としては機能します。
「恥ずかしい」と言われるのはなぜか
「MOS」と検索すると、検索候補に「恥ずかしい」と出てきます。それを見て不安になった、という声も見かけます。
言われている理由は、前の章と同じです。誰でも取れるとされているものを、大きくアピールすると場違いに見える——という話です。
これは「誰に見せるか」で変わります。
| 場面 | どう受け取られるか |
|---|---|
| 実務経験者ばかりの職場で、スキルの高さとして話す | 場違いに見えることがあります |
| 実務未経験で事務職に応募し、履歴書の資格欄に書く | 基本操作ができる証明として機能します |
「恥ずかしい」と言われているのは前者の使い方です。後者の使い方まで否定されているわけではありません。
前職で事務職の採用を担当していたときの感覚で言うと、資格欄にMOSがあって減点になることはありませんでした。実務経験のある応募者と並んだときに決め手にはなりませんが、経験がない方の書類で、パソコンについて何も分からないという状態は避けられます。
言い方を変えると、MOSは「すごい」を伝えるものではなく、「大丈夫です」を伝えるものです。そこを取り違えなければ、恥ずかしいものではないと思います。
事務職では、使えて当たり前ではないのか
3つ目の理由です。「事務職ならOfficeが使えて当たり前だから、資格にする意味がない」という指摘。
これは求人票を読めば確かめられます。2026年9月1日、ハローワークインターネットサービスで東京都の一般求人を検索し、応募条件の欄に「エクセル」を含む求人票の上位50件を全文読みました。
結果として、「当たり前」の中身は、思われているより低いところにありました。最も多かった書き方は「基本操作」「簡単な」「初歩的な」で16件。関数に触れていたのは5件です。
つまり、「使えて当たり前」は正しいのですが、当たり前とされている水準が「入力と基本操作」でした。その水準を証明する試験がMOS一般レベルです。この2つは矛盾しません。
なお、50件のうち17件は、エクセルが必須ではなく「あれば尚可」でした。当たり前どころか、条件にすらなっていない求人が3分の1あったということです。
求人票が求めていた水準
読んだ50件の内訳です。
| 応募条件の欄に書かれていた記述 | 件数 |
|---|---|
| 「基本操作」「簡単な」「初歩的な」 | 16件 |
| 「入力」 | 11件 |
| 関数に言及 | 5件 |
| VLOOKUP | 2件 |
| ピボットテーブル | 1件 |
| マクロ・VBA | 1件 |
※1件の求人票に複数の記述がある場合は、重複して数えています
関数に触れていた5件も、書き方には幅がありました。
| 応募条件・必要なPCスキルの欄 |
|---|
| エクセルの簡単な関数使える方 |
| ・VLOOKUPなど関数を理解できる方尚可 |
| ワードはスムーズな文書作成ができること エクセルは入力ができるレベル |
| 日本語の文字入力を問題なくスムーズにできる方 |
片方は「簡単な」、もう片方は「尚可(なくてもよい)」です。関数が明確に必須条件になっていた求人は、50件のうちごく少数でした。
この調査の詳しい手順と、時給との関係については求人票の「エクセル」は、どこまでできればいいのかに書きました。
MOS一般レベルの出題範囲
MOS公式サイトに掲載されている、Excel 365(一般)の出題範囲です。
| 分野 | 内容 |
|---|---|
| ワークシートやブックの管理 | ブックにデータをインポートする/ブック内を移動する/ワークシートやブックの書式を設定する/オプションと表示をカスタマイズする/共同作業と配付のためにブックを準備する |
| セルやセル範囲のデータの管理 | シートのデータを操作する/セルやセル範囲の書式を設定する/名前付き範囲を定義する、参照する/データを視覚的にまとめる |
| テーブルとテーブルのデータの管理 | テーブルを作成する、書式設定する/テーブルを変更する/テーブルのデータをフィルターする、並べ替える |
| 数式や関数を使用した演算の実行 | 参照を追加する/データを計算する、加工する/文字列を変更する、書式設定する |
| グラフの管理 | グラフを作成する/グラフを変更する/グラフを書式設定する |
出典:MOS公式サイト Excel 365 出題範囲(2026年9月7日確認)
この記事の冒頭に載せた写真は、実際の試験結果レポートです。合否だけでなく、この5つの分野それぞれの得点率が出ます。受けた人がどこをできて、どこができなかったかまで残る形式になっています。
マクロとVBAは、一般レベルの出題範囲に入っていません。上級(エキスパート)でもマクロの記録程度で、本格的なVBAは別の資格の領域です。
2つを重ねると
求人票が求めていた水準と、MOS一般レベルの出題範囲を並べます。
| 求人票の記述 | 件数 | MOS一般レベルでは |
|---|---|---|
| 「基本操作」「簡単な」「初歩的な」 | 16件 | 範囲内 |
| 「入力」 | 11件 | 範囲内 |
| 関数 | 5件 | 範囲内 |
| VLOOKUP | 2件 | 範囲内 |
| ピボットテーブル | 1件 | 上級レベル |
| マクロ・VBA | 1件 | 範囲外(別の資格) |
読んだ50件のうち、一般レベルの範囲で足りていたのが大半でした。範囲から外れていたのは、マクロを求めていた1件だけです。
逆に言うと、MOS一般レベルは、事務職の求人票が求める水準をやや上回るくらいの位置にあります。過剰でもなく、不足でもない。この一致は偶然ではなく、この試験が「Officeの基本操作ができることを証明する」目的でつくられているためだと思います。
上級(エキスパート)まで要るのか
上級レベルについても「意味がない」と言われることがあります。事務職への応募が目的なら、一般レベルで足りると思います。求人票50件のうち、上級の範囲に当たる記述はピボットテーブルの1件だけでした。
順番についても、公式に注意書きがあります。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 上級レベルに合格すると、一般レベルのスキルも証明できますか? | 一般レベル(スペシャリストもしくはアソシエイト)と上級レベル(エキスパート)は出題範囲がほとんど重複しておりません。このため、上級レベルを取得しても一般レベルのスキルを証明することにはなりません。 |
出典:MOS公式サイト 試験全般に関するよくあるご質問(2026年9月7日確認)
上級を先に取っても、一般レベルの証明にはなりません。「上のほうを取っておけば下も含まれる」という考え方は、この試験には当てはまらないということです。
公式が2026年2月に公表した合格者アンケート(有効回答424名)では、一般レベル合格者のうち上級を受験した方は23.8%でした。受験していない理由の最多は「上級のスキルまでは必要としていない」で34.7%です。
出典:MOS合格者アンケート ~資格取得後のスキル活用と学習意識~(2026年2月27日公表・2026年9月7日確認)。試験を運営する会社が、自社の合格者に対して行った調査です。
AIやマーケティングを先に学ぶべきか
「意味がない」という話のあとに、「これからはAIやマーケティングを学ぶべきだ」と続くことがあります。教室でも、それを読んで迷われている方にお会いします。
事務職の求人票を読むかぎり、この順序を支持する材料は見つかりませんでした。読んだ50件の応募条件に、生成AI・ChatGPT・マーケティングという語は出てきませんでした。出てきたのは、エクセル、ワード、入力、基本操作といった語です。
AIを学ぶこと自体を否定しているのではありません。順番の問題です。表計算の基本操作ができない状態で生成AIに表をつくらせても、出てきたものが合っているかを判断できません。AIは作業を速くしますが、正しいかどうかを決めるのは使う人です。
そもそも、この2つは対立していません。先ほどのアンケートでは、MOS合格者の約7割が「Microsoft Copilotを今後積極的に活用していきたい」と答えています。Officeを使いこなす人ほどAIも使う、という結果です。
もうひとつ、応募の場面での事情があります。AIやマーケティングのスキルは、履歴書に書いても水準が伝わりません。「ChatGPTが使えます」と書いても、採用する側は何ができるのか分かりません。前職で書類を見ていたときも、そこは判断できませんでした。資格という形になっているものは、その点が違います。
履歴書に書けるということ
MOSは、履歴書の資格欄に正式名称で書けます。
合格すると試験結果レポートと合格認定証が発行されます。2025年9月24日以降に合格した認定資格には、5年間の有効期間がつきました。期間が過ぎても資格自体が無効になるわけではなく、合格履歴は残ります。
実務経験がない場合、「できること」を客観的に示す手段は多くありません。職務経歴書に書ける経験がないなら、資格欄で示すしかない。MOSはその用途に向いています。
ただし、MOSを持っていれば採用されるという話ではありません。一般事務の有効求人倍率は0.29倍(令和8年7月・全国)で、応募が集まる職種です。資格は応募の土俵に乗るためのもので、それだけで決まるものではありません。この点は事務職の求人と、求人票に書かれている条件に書きました。
それでもMOSが要らない方
次に当てはまる方には、必要ないと思います。
- すでに実務でExcelを日常的に使っている方。職務経歴で示せます
- 応募したい求人が決まっていて、その求人票にエクセルの条件がない方。先に応募したほうが早いです
- デザインや専門職を目指している方。求められるものが違います
- 費用をかけたくない方。受験料12,980円は必須です。応募するだけなら費用はかかりません
逆に、実務経験がなく、事務職に応募したい方には合っていると思います。求人票が求める水準と範囲が重なっていて、履歴書に書ける形になり、費用は独学なら1科目15,290円です。
費用の内訳と、どの科目から取るかはMOS資格の費用は?受験料12,980円・独学なら1科目15,290円で取れますに書きました。独学と教室の使い分けもそちらに整理しています。
この記事で分からないこと
- MOSを取ると採用されやすくなるのかどうか。これを示す統計を見つけられませんでした。この記事で確かめたのは「求人票が求める水準と出題範囲が重なっている」ことだけです
- 実際の合格率。公式が公開していないため、難易度を数字で示すことはできません。「誰でも取れる」も「そうではない」も、確かめられません
- この記事で引用した合格者アンケートは、試験を運営する会社が自社の合格者に行った調査です。不合格だった方や受験しなかった方は含まれません
- 読んだ求人票50件は東京都・新着順の上位50件で、無作為抽出ではありません。他の地域や別の日では違う結果になります
- 求人票に書かれた「基本操作」が、その職場で実際にどんな作業を指すのか。文字からは分かりません
- 応募後の選考で何が見られるか。求人票には書かれていません
「意味がない」という意見も、この記事の内容も、統計で決着がついている話ではありません。前提が違えば結論も変わります。この記事は、事務職や再就職を目指している方にとってどうかという前提で書きました。
この記事を書いているのは、八王子と国分寺でパソコン教室ピアを運営している田所です。MOS対策も行っていますが、独学で取れる方は独学のほうが安く済みます。教室の詳細はこちら
この記事の運営者について
八王子と国分寺でパソコン教室ピアを運営し、MOS対策の講座も行っています。前職では事務職の採用を担当していました。MOSの記載はすべて公式サイトの原文を引用し、求人票はハローワークインターネットサービスで公開されているものを実際に読んで数えています。教室に通わず独学で取れる場合は、そう書きます。
この記事の情報について
MOSの出題範囲・合格率・受験料・アンケート結果は、2026年9月7日にMOS公式サイト(株式会社オデッセイ コミュニケーションズ)で確認したものです。求人票の記述は2026年9月1日にハローワークインターネットサービスで確認しました。有効求人倍率は厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年7月分の数値です。制度と価格は変更されますので、受験前に必ず公式サイトでご確認ください。
- MOS公式サイト 試験全般に関するよくあるご質問
- MOS公式サイト Excel 365 出題範囲
- MOS合格者アンケート ~資格取得後のスキル活用と学習意識~
- MOS公式サイト 受験料・価格
- ハローワークインターネットサービス
- 厚生労働省 一般職業紹介状況
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